僕達の願い 第12話


診察をするからと部屋から追い出され、ジェレミアが護衛のためドアの前に残り、スザク達は藤堂が控えていた部屋へ移動した。
そこには藤堂だけではなく、四聖剣も待機していた。

「で、スザクよ。藤堂と神楽耶、ラクシャータ、そして四聖剣が知る情報は得ている。だから今その話はあとだ」
「そうですね。今話すべきは今後のこと。まず、ルルーシュとナナリーの母マリアンヌ様殺害の犯人と、それに関わる話をしましょう」

スザクは、ナナリーに話したマリアンヌ暗殺の主犯V.V.の話と、ルルーシュが恨まれている話をした。ナナリーは未だに自分の記憶との違いに納得出来ないようだが、それでもギアスによる記憶改竄に関しては、ミレイたちを見ているため納得するしか無いと考えているようだった。

「つまり、皇帝に最も近い人物であるV.V.もまた、記憶を持っている可能性が高いということです」
「ふむ、ならばそのV.V.とやらは、戦後ルルーシュがどう動いたか全て知っていると考えるべきか」
「全て知っているはずです。アッシュフォードに隠れていたことも知っていましたから。それに、以前の時代でもルルーシュとナナリーを狙う暗殺者がこの枢木の家にもやって来ました。その中にV.V.の手の者が居た可能性もあります」

それはつまり、この場所は安全ではない、いや、安全ではなかったということ。

「では、ルルーシュ様の治療を理由に、お二人を皇で引き受けましょう。護衛にはジェレミア卿だけ同行していただき、スザクも此方にとゲンブを説得したら解決ですわ」
「その方がいいかもしれない。他のSPは役に立ちませんし、護衛というより彼らはルルーシュの監視です。もし皇帝側から命令があれば、躊躇うこと無く二人を暗殺するでしょう」

その言葉に、ナナリーは身を縮め、両手をぎゅっと握りしめた。それに気がついた神楽耶がナナリーの手を握り、ニッコリと微笑んだ。

「大丈夫ですわ、ナナリー様。私達がおります。あの時代のように苦しむ必要などありませんわ」

ルルーシュが笑っている為には、ナナリーが必要だと言う事は知っている。
だから貴女も、あの方も、私が守ります。
それが、あの時悪逆皇帝などという名を与えた私の償い。
二人が共に笑っていられる世界を作る。
それが今の私の願い。

「神楽耶様・・・」
「だが、もし此方で引き受けるとなれば、皇より儂の所の方がいいだろう。神楽耶が何を言っても、あちらにはまだ堅物が生きておるからな」

今は戦争前で、神楽耶の親も、親類も、なにより天皇陛下も生きている。そこにルルーシュたちを連れて行っても何を言われるか、何をされるか解らないが、桐原の所なら当主が桐原自身なのだから、誰も何も文句を言えないのだ。

「それもそうですわね。では桐原の所にしましょう。ラクシャータがブリタニアに対向するKMFの制作をする資金は、皇の方で出来るだけ負担することにしますわ」
「ラクシャータがKMFを?」

この時代の日本でKMFが作れるという事なのだろうか。
もしそうなら、鎧と剣を再び手にすることができると、その話に食いついた。

「ええ。とは言え、ラクシャータが作れるのは紅蓮や月下など日本産のKMF。スザクが乗れるブリタニア産のKMF、ランスロットは作れませんわよ?」

スザクの反応に、困ったように眉尻を下げ、苦笑しながらカグヤはそう告げた。

「KMFならどのタイプでも乗りこなす自信はあるよ。でも、そうか。ラクシャータがいるから作れるのか、KMFを」
「ええ。ブリタニアが攻めてくることは解っていましたから、ラクシャータと連絡を取り、既に準備には入っていたのです。藤堂からルルーシュ様の話を聞き、主治医となってもいいと言ってくれましたが、出来ることなら、彼女は今まで通り此方側で作業もさせたいところです」

主治医となれば、ラクシャータもまた枢木に居ることになってしまう。
それはつまり、その分KMFの制作が遅れるということだ。

「なら余計にルルーシュたちをそちらに移動させなきゃね」
「KMFの製作者、そしてパイロットが揃っておる。急げば間に合うかもしれんからな」
「開戦までに、ですか」

既に期限は迫っている。
だが1騎でも多く完成すれば、此方で乗るのは、あの激戦を生き抜いた経験者だ。
勝率は上がる。
その上攻めてくるのは第4世代。
此方に居るラクシャータは第8世代KMFの製作者。
その知識も、技術も、既に此方にあるのだ。
そして大量のサクラダイトもまた此方の手にある。

「うむ。此方にKMFがあれば、あのような敗戦はないだろう。藤堂と四聖剣、そしてスザク。既に5人経験者が此方に居るのだ」
「それに、ルルーシュは目も見えず体も動かせないけど、その頭脳は変わりません。ナナリーをルルーシュのサポートとなれるよう訓練できれば、彼が作戦をたて、指揮をとることも可能でしょう」

稀代の革命家にして英雄ゼロ。
世界を手玉に取り、世界征服を成した悪逆皇帝。
その戦略。
ブリタニア最強の騎士、ナイト・オブ・ゼロ。
その戦術。
騎士と将軍の力を併せ持つ、黒の騎士団幕僚長
そして、その部下である四聖剣。
最強のKMF紅蓮聖天八極式の製作者。
開戦前にこれだけの人材が集まったのだ。
ならば。

「おねがいします。僕の機体も作成してください」

彼を守るための僕の鎧を。

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